はじめに
このページでは「歯科」で求められる感染症対策について紹介します。
新型コロナ感染症(Covid-19)対策の中でも飛沫感染をどう防ぐかが重要になってきますが、歯医者は仕事上口からの飛沫回避が難しく、その分しっかりとした対策が求められます。安全な歯科診療を提供できるよう、最大限の工夫をしていきましょう。
また日本歯科医師会のウェブサイトでは「院内における新型コロナウイルス 感染症対策チェックリスト」も公開されています。全項目を実践、チェックしてWEB申請すると「みんなで安心マーク」が発行され、掲示することで患者に安心感を与えることができます。
目次
受付、待合室等で求められる感染症対策
受付、待合室等で求められる感染症対策をご紹介します。
適切な換気(二酸化炭素濃度計・CO2センサーの設置)
定期的な窓開けなどによる換気を徹底します。(SARS流行の際、空調設備の整った病院より窓を開け放っていた病院のほうが院内感染率が低かったとの報告もあり、換気の重要性が指摘されているとのことです。)
なお換気には、室内のCO2濃度を1000ppm以下に保つことが集団クラスター感染対策として有効とされており、厚労省および内閣官房新型コロナ対策本部より二酸化炭素濃度計(CO2センサー)の設置が推奨されています。
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設備等の消毒
共用部分、共有物等の消毒等を適時、適切に実施します。消毒を行うスタッフは、手袋、マスク、ゴーグルを着用するようにします。
トイレについても、使用ごとに(使用ごとが難しい場合は定期的に)ドアノブ、便座、流しハンドルなどを清拭します。
マスク着用・手指消毒等
職員に対して、サージカルマスクの着用、手指衛生を適切に実施します。
玄関入口に手指消毒剤の設置をするようにします。
患者、取引業者等に対しても、マスクの着用、手指衛生の適切な実施を指導します。
患者に対しても治療行為以外の時間は原則ユニット着席時でもマスクの装着をしてもらいましょう。
職員のマスクについては、製品の機能や性能を理解して、適切な選択のもと正しく使用します。
職員の体調管理
職員に対して、毎日(朝、夜)の検温等の健康管理を適切に実施します。
職員が身体の不調を訴えた場合に適切な対応を講じます。
スタッフルームや医局での職員同士による感染予防
院内クラスター発生を予防するため、「対面での食事を避ける」「密接状態での会話は行わない」「適切な診療着の着脱や交換管理を行う」「スタッフルームなどにおける換気にも注意する」等の対策を行います。
発熱患者への対応
事前に電話相談等を行い、帰国者、接触者センターまたは対応できる医療機関へ紹介する等の対応を講じます。
患者の密集回避
診療スケジュールを調整して可能な限り予約間隔や使⽤ユニットの調整の検討を行うようにします。
また待合室で一定の距離が保てるよう予約調整等必要な措置を講じます。
接触感染予防への配慮
待合室・診療室の遊具などを撤去するようにし、雑誌や本など消毒が困難なものは置かないようにします。
マスク等廃棄時の注意
マスク・手袋などの個人防護具を外す際は、それらにより環境を汚染しないよう留意し、所定の場所に廃棄します。
受付の感染予防策
常時、サージカルマスク、ゴーグル等の装着が必要です。
あるまたビニールシートやアクリル板パーテーションなどによる遮蔽物の設置等も効果的ですが、の換気状態が悪い環境においては注意が必要です。
「みんなで安心マーク」について
日本歯科医師会のウェブサイト(https://www.jda.or.jp/dentist/anshin-mark/)を通じて感染対策の認証を取得し、国⺠に分かりやすい「みんなで安心マーク」を掲示することが可能です。
診察時に求められる感染症対策
診察時に求められる感染症対策をご紹介します。
マスク・手袋・ゴーグル等の着用
診察室について飛沫感染予防策を講じるとともに、マスク、手袋、ゴーグル等の着用等適切な対策を講じます。
手袋は患者ごとに交換し、治療前後(手袋の装着前後)には、手指衛生(手洗い、手指消毒)を徹底します。
診療チェア消毒や医療機器等の滅菌
チェアの消毒や口腔内で使用する歯科医療機器等の滅菌処理等の感染防止策を講じます。ユニット周りだけでなく、レセプトコンピューターなどの周辺機器も清拭します。
新型コロナウイルスはエンベロープを有するためアルコールにより不活化します。また、環境消毒には次亜塩素酸ナトリウム水溶液も用いることができ、アルコールは60%以上、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は0.05%の濃度が推奨されています。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ユニット内部や設備品に錆が生じることもあるので、水拭きをすることも大切です。
エアロゾル対策(吸引装置の適正使用)
患者の口から放出される液滴とエアロゾルの分散を防ぐために、口腔内での歯科用バキュームの確実、的確な操作を行います。口腔外バキューム(口腔外吸引装置)の活用も有効です。
エアタービン、ハンドピース、超音波スケーラーなどの使用時に放出される水量についても適正な水量調整により飛沫を最小限に押さえられるよう注意し、始業点検時、診療時などこまめなチェックを行います。
治療中における飛沫防止のためラバーダムの活用も望ましいです。
印象材、技工物等の消毒
アルジネート印象材はラバー系印象材よりも口腔内微生物が付着しやすく、120秒以上、シリコーン印象材で30秒以上の水洗が推奨されています。アルジネート印象材に付着した微生物が石膏模型に伝播するのを防ぐため、石膏注入前に消毒します。(0.1~1.0%次亜塩素酸ナトリウム溶液で15~30分、2~3.5%グルタラール(グルタルアルデヒド)溶液で30~60分浸漬など)
完成技工物の消毒は、逆性石けんによる洗浄、次亜塩素酸系消毒薬への浸漬、エタノールによる清拭・噴霧、紫外線照射などがあります。
X線撮影について
嘔吐反射の強い患者、喘息や呼吸器疾患がある患者など、咳やむせなどの飛沫発生リスクが高い患者については口内撮影法を避け、可能な場合は口外撮影法を検討します。
治療前後の口、喉のうがい
治療前の感染予防として、患者に治療開始前に消毒薬でうがいしてもらい、口腔内の微生物数レベルを下げてもらいます。
また、治療後におけるうがいも有効です。
消毒薬としては、ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられます。
引用・参考リンク
<新たな感染症を踏まえた歯科診療ガイドライン>